えごさいと 烏の巣

如何屋サイと読書実況 烏の巣

如何屋サイと読書実況 のメモ

烏の巣 川越 地星子

 題材として非常に際立っている事には疑いはないのだけど、ハンチバックの話も出たけどハンチバックと大きく違う点は、作者が作者自身を物語として消費することを拒んでいるか、そうでないか。

私が見た印象だと、作者がこの件を物語として扱うほど突き放し切れていないというか、まあ内容を見るとそうそう突き放せるものでもない感。

 この読み手の意識というものですけども、自分自身の事を語る時って、何かしらのエビデンス(鏡、写真とか、手記とか)経由でしか書けない物で。リアルな話なのに、リアリティがない、というのがそれで。本作は作者と作品が本当にゼロ距離の接写だから、エビデンスを一つも経由していない。それを解決する方法も、時間経過しかないのかなと。自分から物語を解放するのか、あるいはその逆かですが。

 寧ろ作者の温度感として「これ、実話ですか?」と聞かれたときに「そんなわけないじゃないですかあ」ってはぐらかせるくらいの方が健全。恐らくだけど、著者が何本か作品を書き続けた後、この件に対してある程度心的にも距離を取れるほどになってからリライトすると、かなり化けるのでは無いかという気もする。

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